RESEARCH AREAS

Research

微細な構造を作り、光・電磁波・生命のふるまいを捉える。菅研究室はMEMSを共通のものづくり基盤として、5つの研究領域に取り組んでいます。

共同研究・研究資金について

各テーマの末尾に、主な共同研究先と採択資金を掲載しています(2026年10月時点)。競争的資金の最新情報・研究課題の詳細は、KAKEN(科研費データベース)、日本の研究.comをご参照ください。

01

小型分光器技術

Miniaturized spectroscopy

金回折格子を持つSPR光検出器でガスの透過スペクトルを測定する概念図
金回折格子型の光検出器を用いたガス分光の概念図。既存サイト掲載の研究紹介画像。
関連論文:Yamamoto et al., ACS Applied Nano Materials (2021)

光の波長情報を、小さなデバイスで読み解く。

光のスペクトルには、物質の種類や状態を知る手がかりがあります。私たちは、金属回折格子の表面プラズモン共鳴を利用し、シリコン製光検出器の応答からスペクトルを推定する再構成分光技術を研究しています。ガスの吸収分光やMEMSによる機構の小型化を通じて、機械に組み込める分光器を目指しています。

研究の面白さ

面白さは、微細構造の設計と計算を結び付けて、測れる情報を増やせることです。一つひとつの光電流に重なっている波長情報を、入射角や構造を変えて得た応答から読み解きます。自分で作ったデバイスと再構成の方法がかみ合い、スペクトルが現れるところに、この研究の醍醐味があります。

挑む課題

異なるスペクトルが似た電流応答を生むと、測定値から元の光を見分けにくくなります。どのような応答を持つ素子を作り、どの条件で測れば、雑音があっても情報を取り出せるのか。光学設計、微細加工、回路、逆問題を行き来しながら、ハードウェアと解析を一体で考えることが課題です。

再構成分光 / 表面プラズモン共鳴 / MEMS / ガス計測

Selected papers

  1. Advanced Room-Temperature NIR Plasmonic Photodetection and Reconstructive SpectroscopyEslam Abubakr et al. · IEEE Transactions on Electron Devices 72(1), 301–305 (2025)DOI近赤外光検出と再構成分光
  2. Plasmonic photodetector with submicron grating for reconstructive spectroscopy of low-intensity broadband lightYuuki Kaneda et al. · Optics and Lasers in Engineering 183, 108501 (2024)DOI微弱な広帯域光の再構成分光
  3. Near-Infrared Spectroscopic Gas Detection Using a Surface Plasmon Resonance Photodetector with 20 nm ResolutionYosuke Yamamoto et al. · ACS Applied Nano Materials 4(12), 13405–13412 (2021)DOIガス吸収スペクトルの測定
02

シリコン製赤外線受光器

Silicon-based infrared photodetectors

Au/PtSi/p-Siナノホールアレイを備える背面照射型中赤外線受光器
Au/PtSi/p-Siナノホール構造を用いた中赤外線受光器。既存サイト掲載の研究紹介画像。
関連論文:Shiraishi et al., Applied Optics (2022)

シリコンと金属の界面から、赤外線を検出する。

シリコンを基盤とした近赤外・中赤外光検出器を研究しています。金属とシリコンの接合に生じるショットキー障壁と、光を閉じ込める微細構造を組み合わせ、通常のシリコン受光器では検出しにくい波長帯の光を電流として取り出します。PtSi/p-Siなどの低障壁接合やナノホール構造を利用し、室温での赤外線センシングを追求しています。

研究の面白さ

面白さは、同じシリコンでも、表面の構造と金属との接合を工夫すると、検出できる光が変わることです。ナノメートルの形状や薄い界面層が、光の吸収や電子の移動を左右します。目に見えない光と電子のふるまいを、自分で作製した素子の電流として確かめられる研究です。

挑む課題

光をよく吸収する構造を作っても、それがそのまま大きな信号になるとは限りません。励起されたキャリアを取り出す過程や暗電流、雑音まで考える必要があります。長波長への感度、信号の大きさ、動作の安定性をどう両立するか。電磁場と半導体の物理をつなぎ、構造・材料・界面のどこが性能を決めているのかを実験で見極めます。

ショットキー接合 / PtSi / プラズモニクス / 近赤外・中赤外

Selected papers

  1. Study on Temperature-Dependent Photoresponsivity and Stability of Mid-Infrared Photodetector Based on Si-Process-Compatible Plasmonic PtSi/p-Si Schottky StructureAshenafi Abadi Elyas et al. · Journal of Electronic Materials 54(5), 4074–4082 (2025)DOI温度依存性と安定性
  2. Modifying interface properties for advanced self-powered refractory NIR plasmonic photodetection and broadband spectroscopyEslam Abubakr et al. · Materials Science in Semiconductor Processing 197, 109712 (2025)DOI界面設計による近赤外光検出
  3. Room-temperature plasmonic mid-infrared photodetector based on PtSi/p-Si low Schottky-barrier junctionMasahiko Shiraishi et al. · Applied Optics 61(14), 3987–3996 (2022)DOI低障壁PtSi/p-Si接合による中赤外光検出
03

小型化学量センサ

Miniaturized chemical sensors

SPRセンサの回折格子構造、ショットキー障壁のバンド図と作製デバイスの写真
電流検出型SPRセンサの構造・検出原理・作製デバイス。
Ukaji et al., ACS Omega (2025), Fig. 1. CC BY-NC-ND 4.0(図は改変せず掲載) · License

表面で起こる変化を、電流として読み出す。

表面プラズモン共鳴(SPR)を利用し、液体の屈折率やセンサ表面の状態変化を捉える小型センサを研究しています。金属回折格子と金属/シリコン接合を組み合わせ、共鳴に伴う変化を光電流として検出します。背面からの光結合やマイクロ流路との統合により、化学量計測や生体分子計測に利用できる小型システムを目指しています。

研究の面白さ

面白さは、表面付近のごく小さな変化を、光と半導体の働きによって読み取れることです。液体や分子の変化が、共鳴条件を変え、最終的に電流の変化として現れます。この連鎖を一つのチップの中に作り込むために、光学・電子デバイス・流体を組み合わせます。

挑む課題

測定電流には、試料の変化に加えて、温度、光の強さ、接合界面の状態なども影響します。その中から測りたい変化をどう識別し、再現性のある測定にするかが課題です。界面の拡散や表面状態を調べ、流路・光学系・電流読み出しを整えながら、感度と安定性を両立する設計を探ります。

SPRセンサ / 屈折率計測 / 電流検出 / マイクロ流路

Selected papers

  1. Au–Si Diffusion Effects on Surface Plasmon Resonance Sensor Using Internal Photoemission at Metal/Si Schottky BarrierMasaya Ukaji et al. · ACS Omega 10(46), 56856–56862 (2025)DOI界面拡散とセンサ性能
  2. Detection of backside coupled propagating surface plasmon resonance on the sidewall of a waferMasaaki Oshita et al. · AIP Advances 13, 115325 (2023)DOI背面結合と電流読み出し
  3. Electrical detection SPR sensor with grating coupled backside illuminationYoshiki Saito et al. · Optics Express 27(13), 17763–17770 (2019)DOI背面照射型SPRセンサ
04

メタマテリアルによる環境センシング

Metamaterials for environmental sensing

農地の土中に配置したメタマテリアルを電波で読み取る構想と分解過程の概念図
等方性メタマテリアルを土中に配置する計測構想。分解まで含む図中の運用は将来構想であり、同論文の実証は土中での電磁応答評価です。
Yarimizo et al., Mechanical Engineering Journal (2026), Fig. 1. © 2026 JSME. CC BY-NC-ND 4.0(図全体を抜粋) · License

電波の応答から、土壌の状態をワイヤレスに捉える。

金属の共振構造で構成するメタマテリアルを利用し、土壌水分・pH・尿素などを電磁波の応答として読み取るセンサを研究しています。シート型の完全吸収体や立体的な等方性構造を開発し、電池や配線に頼らない計測に取り組んでいます。生分解性材料も利用し、広い範囲への配置と計測後の環境負荷低減を目指します。

研究の面白さ

面白さは、構造と材料の組合せによって、環境の変化を電波で読める情報へ変えられることです。水分による誘電率の変化や、化学反応に伴う材料の溶解を、共振の変化として利用します。センサが役目を終えた後にどう分解するかまで、機能設計の一部として考えます。

挑む課題

実際の土壌では、水分、温度、埋設深さ、センサの向きなどが同時に変わります。弱い反射信号から目的の情報を取り出すには、電波の伝搬と共振構造の働きを理解し、影響を切り分ける必要があります。計測中の安定性と使用後の分解性をどう両立するかも、電磁気学・材料・化学を横断する課題です。

GHzメタマテリアル / ワイヤレス / 土壌計測 / 生分解性材料

Selected papers

  1. Biodegradable Wireless Soil Urea Sensor Using Metamaterial Perfect Absorber for Distributed Deployment in Precision AgricultureYu Tanaami et al. · Advanced Materials Technologies 11(17), e71121 (2026)DOI土壌尿素のワイヤレス計測
  2. Performance evaluation of hollow isotropic metamaterial for wireless monitoring of the subsurfaceTetsuya Yarimizo et al. · Mechanical Engineering Journal 13(5-S2), 26-00238 (2026)DOI土中での等方性メタマテリアルの応答評価
  3. Soil moisture monitoring using sheet-type GHz metamaterial perfect absorberFumiya Noto et al. · Mechanical Engineering Journal 12(4), 25-00101 (2025)DOI土壌水分センシング
  4. Biodegradable RF Metamaterial Perfect Absorber for Wireless Soil pH MonitoringSoma Sato et al. · Advanced Materials Technologies 10(8), 2401134 (online 2024; issue 2025)DOI自然分解性デバイスによる土壌pH計測
05

微小流路によるバクテリア運動解析

Microfluidics for bacterial motility analysis

微小流路の模式図、狭い流路と広い空間での細菌遊泳軌跡の比較と顕微鏡像
微小流路内での細菌の運動。流路構造、遊泳軌跡と顕微鏡像を示します。
Yoshioka et al., Nature Communications (2026), Fig. 2a–cより抜粋. CC BY 4.0 · License

微小な環境を作り、細菌の動きを解き明かす。

細菌が狭い空間をどのように進むのかを、微細加工で作った流路を用いて調べています。流路の寸法や形状を制御し、自然環境や宿主内の微小空間を模擬して、細菌の運動を観察・解析します。生物学分野の研究者と協力し、べん毛を体に巻き付ける運動と狭小空間の通過との関係を明らかにしてきました。

研究の面白さ

面白さは、観察したい環境そのものを作れることです。「なぜ細菌はこの狭さを通り抜けられるのか」という疑問に対し、流路幅や形状を変えながら、動きがどう変わるかを確かめます。微細加工が、生き物の運動戦略を理解するための実験道具になります。

挑む課題

細菌の動きには、べん毛、流体の粘性、壁面との相互作用、個体差などが関わります。観察した現象の原因を見極めるには、流路の加工精度を確保し、比較する条件を丁寧に設計することが重要です。画像から運動を定量化し、物理的な説明と生物学的な意味を結び付けるところに、取り組みがいがあります。

マイクロ流体デバイス / 細菌運動 / べん毛 / 共生

Selected papers

  1. Bacteria break through one-micrometer-square passages by flagellar wrappingAoba Yoshioka et al. · Nature Communications 17, 713 (2026)DOI狭小空間におけるべん毛巻き付き運動
  2. Drilling Bacterial Motility in Confined Spaces Investigated Using Sub-Micron Width Fluidic ChannelsYoshiki Shimada et al. · IEEE MEMS 2025 (conference paper)DOI微細流路を用いた運動解析

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